星辰が司るもの、天象の記録 

 


 太陽、月、惑星は星辰の神となります。その動きは、地上にもたらされる出来事の予兆(オーメン)でした。天象と、実際に地上で起こった出来事を関連付けながら占星術が発達していくのですが、ただし、すべての天象が具体的な事象に紐づけされたわけではありません。「このような予兆に違いない」という恐れや期待も入り混じりながら、占星術の解釈が行われていくようになります。

 太陽と月に関しては、以下のいずれの神話でも神格化されていますが、惑星に関しては、必ずしも神格化されていないこともあります。

 エジプト神話において神聖視されたのは太陽と月ですが、他の惑星については、注目されていません。のちにトート神が水星と関連付けられたのは、トート神がメルクリウス神と同視された結果です。

ゲルマン神話においては、太陽、月は神格化されてはいますが、他の惑星には関心がなかったようです。のちにフレイヤが金星と関連付けられたのは美の女神であることから、オーディン神が水星と関連付けられたのは、オーディン神が知恵を司り、メルクリウス神と同視された結果です。

 太陽、月以外の惑星神がすべて登場する神話は、バビロニア神話、ギリシャローマ神話、そしてヒンドゥ神話です。


太陽 光をもたらす支配神

バビロニア神話において    ウトゥ、シャマシュ(古くは女性神、のちに男性神)

エジプト神話において     ラー、アテン、ホルス(男性神) 

ギリシャローマ神話において  アポロン(ヘリオス) ソルのちにミトラスと習合(男性神)

ゲルマン神話において     ソール(女性神) 闇の狼フェンリルに追いかけられる

ヒンドゥ神話において     スーリヤ(男性神) 3つの眼に4本の手

 

月 豊穣をもたらす神

バビロニア神話において     シン(男神)欠けても満ちることから豊穣神

エジプト神話において      コンス(男神)月の船に乗って移動する

ギリシャローマ神話において   アルテミス(セレネ) ルナ(ダイアナ)、ヘカテ(女神)

ゲルマン神話において      マーニ(男神)闇の狼フェンリルに追いかけられる

ヒンドゥ神話において      ソーマ、チャンドラ(男神)27人の妻を持つ

 

水星 知恵を司る神(移動する伝令神、明け方と夕方に姿を見せる)

バビロニア神話において     ナブー(男神)

エジプト神話において      惑星としての水星はたぶん登場しない。

ギリシャローマ神話において   ヘルメス メルクリウス(男神) 伝令神

ゲルマン神話          登場しない

ヒンドゥ神話において      ブダ(男神) 知恵の神

 

金星 美をもたらす神(夕方と明け方に明るく輝く)

バビロニア神話において    イナンナ イシュタル(冥界下りする女神)

エジプト神話         登場しない

ギリシャローマ神話において  アフロディテ ビーナス(女神)

ゲルマン神話において     惑星としての金星はたぶん登場しない

ヒンドゥ神話において     シュクラ(男神)白い神

 

火星 軍神、疫病神(22カ月ごとに逆行する)

バビロニア神話において    ネルガル(男神)疫病神

エジプト神話         登場しない

ギリシャローマ神話において  マルス マース(男神) 軍神

ゲルマン神話         登場しない

ヒンドゥ神話において     マンガラ(男神) 赤い肌4本の手

 

木星 創造神、神々の王(白く明るく輝き12年で全天1周)

バビロニア神話において    マルドゥク 神々の王

エジプト神話         登場しない

ギリシャローマ神話において  ゼウス ジュピター ユピテル(男神)

ゲルマン神話         登場しない

ヒンドゥ神話において     ブリハスパティ(男神)創造神

 

土星 農耕神 (暗く遅く、30年で全天1周)

バビロニア神話において    ニヌルタ(男神)

エジプト神話         登場しない

ギリシャローマ神話において  サトゥルヌス クロノス(男神) 農耕神

ゲルマン神話         登場しない

ヒンドゥ神話において     シャニ(男神)黒い神


 太陽、月、そして惑星は、恒星(星群)の中を移動しながら、時には、明るい恒星と並び、あるいは逆行し、惑星同士が接近して輝く。その天象は、なぜ起こるのか。自然現象(天象も含めて)に宿る意思は、何を告げようとしているのか。

 紀元前7世紀、アッシリアのアッシュルバニパル王(シリア、さらにエジプトとバビロニアを支配した王)が首都ニネヴェに建設した図書館には、古い時代からの天象を記録した粘土板、『エヌマ・アヌ・エンリル』があり、さまざまな天象が記録されています。(世界最古の物語とされる『ギルガメシュ叙事詩』の粘土板も、この図書館に収められています。)

  長らく天を見上げて観測をしているうちに(またその記録の集積から)、占星術師たちはさまざまな天象のサイクルに気づくようになります。

 水星と金星は太陽からあまり離れることなく、2つの姿を見せます。すなわち、太陽の後に輝くか、太陽の先に輝くか。

 明け方の東の空に太陽よりも早く姿をあらわして明けの明星となったのち、太陽に近づいて姿が見えなくなり、しばらくすると夕方の西の空で、太陽が沈んだあとに宵の明星となって輝き、また姿を消して、再び明け方の東の空に姿をみせる。これが水星と金星のサイクルです。

 金星は、東の明け方の空に輝く「明けの明星期間」が約236日(約8か月間)、90日(3か月間)ほど姿を消し、次に夕方の西の空に輝く「宵の明星期間」が約250日(約8か月間)、それから8日間ほど姿を隠したのち再び東の明け方の空に姿をみせます。この日数をすべて足したサイクルが約584日です。

 水星が明け方の東の空に輝く「明けの明星期間」は28日間ほど、姿を消してから37日間。38日目に西の空に姿をあらわし、26日間ほど輝いたのち、24日間姿を消し、25日目に再び東の空に姿をあらわす。この日数をすべて足すと約115日です。(水星の高度は低いので、その姿はなかなか眺めることができません。)
 火星が22か月ごとに明るく輝き、逆行すること。木星が12年かかって全天を一巡りすること、土星は30年かかってようやく全天を1周することにも気づきます。
 そして木星と土星は、約20年に一度、並んで輝きます。グレートコンジャンクションです。日蝕、月蝕が、約半年ごとのサイクルで発生することなども、長い観測の結果、知るようになりました。
 
 これらのアストラルサイクルが、なんらかの社会的な出来事が発生するサイクルと一致している、という仮説はつねにあります。グレートコンジャンクションは、アストロロジャーにとっては、景気のサイクルをあらわしていると考えることが一般的であり、となると、約20年サイクルのクズネッツ・サイクル(クズネッツの波)と関連付けられるのかもしれません。

 




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